第1章 夏真っ盛り・俺真っ盛り?


★★★★★


「オースケ先輩~♪」


新校舎の2年専用下駄箱に、ドロドロに溶けたアイスのような甘ったるい声が響く。


「オースケ先輩?聞こえてますか?」


「・・・・・・・・・」


「今日の帰り、一緒に帰りませんか?」


「・・・・・・・・・」


「ミウ、先輩と寄りたいところあってぇ~」


下駄箱から上履きを取り出して床に投げる俺。


かかとを潰して履き込んだそれに足を引っ掛けて、何も聞こえなかった振りをして足を進めた。


毎日毎日、何なんだよ。


オマエ、1年だろ?


校舎チゲーだろ。


てか、何様?


「先輩?照れてるんですか?」


歩を進める俺の前に、その女は両手を広げて立ちふさがる。


顔を上げれば、頬を膨らまして怒っているような表情。