朝早く、頑丈な自転車に乗った豆腐屋が、ラッパを吹きながらやって来る.

「あさりぃーっ、あさりっ」

と、声を張り上げながら、やっぱり自転車で、あさり売りがやって来る。

あさりを買うと、5合枡で計って、ボールに入れてくれた。

ボールに入れたあさりの砂を、更に吐かせるには

ヒタヒタになる程、水を入れてから、塩を一握り加え

そこに、錆びた包丁か釘を差し込んで、砂を吐くのをうながす。

あさりは、すまし汁か味噌汁にするが

そのあさりの中に、赤貝でも混じっていれば、もうけもの

小さなカニでも入っていようものなら

兄弟で奪い合い、大人達も

「ズワイガニや」

と、嬉しそうに笑って、子供のお椀の中へと入れてやった。