蝉時雨





「‥‥なぁ、菜々。帰るぞ」


呆れ顔の京介

でもその声は私を諭すようで、
柔らかくて、胸がきゅうってする。





「別に‥遊具じゃなくても‥
話‥‥したりさ」

「‥‥‥‥‥‥」

どうしても涼ちゃんに会いたくなくて
訳のわからない言い訳を
ただひたすらに並べる。




自分でもわかってる。
相手を困らせるのに自分のわがままを
優先させてしまう。

こういうところが子供っぽいんだ。








「ちょっとでいいから‥‥」

「‥‥‥‥‥」

「‥‥だからっ…‥‥!」




あんなに気合いいれて
浴衣着てきたくせに、
こんな時間に公園で遊ぼうなんて
支離滅裂なことをこんなに必死で
訴えてるなんて笑える。

それなのに泣きそうになって声が震えてる。









「‥‥‥‥お願い‥‥」

そう言ってぐっと目頭に力を入れると
泣きそうになるのを堪えて顔をあげ、
さっきから黙ったままの京介を見た。