蝉時雨




歩き出そうとした京介のシャツの袖を
ぐいっと引っ張って引き留める。




「‥‥何?」

「あ‥‥‥えっ、と」

焦って引き留めたものの
うまい言い訳が浮かばない。







「こ‥‥公園!!
ちょっとそこの公園行こうよ」

「はあ?何でだよ」

「や、ほら!!
久しぶりに公園行くのもいいじゃない?」

「意味わかんねーよ」

私のいきなりの発言に
京介は思いっきり眉をしかめた。





「ほら!!遊具とかあるし!!
京介、ジャングルジム好きでしょ」

「いつの話だよ。
こんな時間にジャングルジムで
遊ぶ高校生とかいねーだろ。
てか、おかしいだろ」

「‥‥‥‥‥‥」

言葉が続かなくて黙ったまま俯く私を
京介は怪訝そうな顔で見つめる。