蝉時雨



言葉の途中で、視線を逸らせ
うつ向いた私を京介が不思議そうに見つめる。




「‥‥‥ったく。
兄貴は?まだ帰ってきてないの?」

「ううん。帰ってきてるよ」

「はぁ?じゃあ家行けばいいじゃん」

「あ‥‥うん」

煮え切らない返事をする私に
京介は眉をひそめた。





「意味わかんね。変なやつ」

呆れた顔をして京介が家へと体を向ける。
でも一向に動こうとしない私の方に
また振り返り、「ほら、行くぞ」と促した。

でも私の足は動こうとしない。





どうしよう
このままじゃ‥‥‥








「‥‥‥あっ、京介っ!!」