見たくない私の意思に反して
目はいつまでも
二人の姿を捕えてはなそうとしない。
それとは裏腹に、
どんな動いて欲しいと願っても
足は一歩も前に進んではくれない。
涼ちゃんに浴衣姿を見てもらいたいのに、
可愛いと笑ってもらいたいのに、
体は言うことを聞いてくれない。
涼ちゃん家までの後少しの距離が
果てしなく遠く感じる。
「涼ちゃん」と呼ぶ途中で途切れた
愛しい人の名前は、悲鳴みたいに響いて
涼ちゃんの耳に届く前に
夏の蒸し暑い空気に虚しく溶けて、消えた。
ぼんやりとする頭の中で
何度も何度も繰り返されるのはさっきの光景。
涼ちゃんの笑顔。
家の中に入っていく二人を見つめながら
私はただ、その場に立ちすくんだ。
