蝉時雨


逸らせない視線の先には
涼ちゃんと圭織の姿。
私が涼ちゃんの名前を呼ぼうとした瞬間、
家へ向かおうとした圭織を
涼ちゃんが引き止めた。

ぐっと肩を引き寄せられた圭織の後頭部に
少し屈むようにして涼ちゃんの顔が重なって
見えなくなった。







目の前で涼ちゃんが
私じゃない人とキスしてる。








鈍器で殴られたように
ぐらぐらと揺れる視界。

圭織から離れた涼ちゃんは
ぺろっといたずらに舌をだして、
涼ちゃんの肩を圭織が叩く。
そんな彼女を見て照れたように、
でもすごく幸せそうに涼ちゃんは笑った。