蝉時雨



「タイミングばっちりじゃん」

駆け出してその後ろ姿に向かって、
掲げた片手を振る。




「りょ――‥‥」

涼ちゃんを呼ぼうとした瞬間、
目の前に広がる光景に私は言葉を失った。

スロー再生をしているかのように
ゆっくりと、嫌に鮮明に
目の前の景色は流れていく。








見なきゃいいのに

見たって傷つくだけなのに






昼間のうるさい蝉の声も
今はもう聞こえない。