蝉時雨



「居づらいなら
京介巻き込んで行けばよかったのに」

「京介は今日、加藤さん逹とデートだもん」

「あらあら。菜々子ちゃんたら
旦那さん取られちゃったのね」

優花は更に面白そうに、にやにやと笑う。
相変わらずこういうところは京介とそっくりだ。





「もー。京介はいいから!
涼ちゃん見つけたら教えてね」

「はいはい。わかってますよ」

「菜々子、優花!はしまき食べない?」

前を歩いていた友達二人が
私達の方を振り返って
前方にある出店を指差す。





「食べるー!優花、はんぶんこしよ」

「うん、食べきるかわかんないし」

「了解ー!じゃあ買ってくる」

「うん、お願い!!」




涼ちゃんと行けなくてつまんないと
思ってたけど、やっぱり
友達と行くお祭りは楽しい。

それからまた出店を巡ったり、
ばったり会った友達と話したり
花火を見たりして、
楽しい時間はあっという間に過ぎていった。




結局最後まで涼ちゃんの姿は
見つけられなかった。