*
地元で一番大きな祭りに
会場は人で溢れかえっていた。
帯が崩れないように注意しながら
その中を慣れない下駄で歩く。
「にしても菜々子
今日来ないと思ってたわ」
「んー?何で?」
りんご飴を食べるのに苦戦しながら、
隣を歩く優花の方を見た。
「てっきり愛しの涼ちゃんと行くんだと
思ってたから」
「行きたかったよ!
でもさあ‥‥空気読んだっていうか」
「ふーん。
でもあんたもよくやるわねぇ。
10年越しの片想いなんて」
そう言ってしゃくしゃくと
かき氷をまぜながら
「私には絶対無理」と優花が肩をすくめる。
優花とは小学校以来の仲で、
私のことはなんでもわかってる。
面倒見がよくてお姉ちゃんみたいな存在だ。
