蝉時雨



「うん。菜々子は着ないの?」

「菜々子の浴衣姿見たい?!」

思わず身を乗り出して聞く私に、
涼ちゃんはにこにこと答える。





「見たい見たい!
菜々子の浴衣姿なんて、
菜々子が小学校の時以来見てないもんな」

「あら!!菜々ちゃんの浴衣
久しぶりじゃない!
おばちゃんも見たい!!」

「――‥‥っ!!!」



その言葉にさっきまで
あんなに落ちていた気分も
すっかり上がって、上機嫌。
嬉しすぎて倒れそうだ。







「じゃあ今日着てく!!」

「おう!
9時過ぎには俺逹も帰ってくるから
祭りの帰りにでも家おいで」

「うん!絶対来る!!」


行かないわけないじゃない。
絶対涼ちゃんに、浴衣姿見てもらうんだもん。