蝉時雨




いよいよ対面するんだ‥‥
想像だけで作った圭織の姿を思い浮かべ
眉間に変に力が入る。


京介も私と同じように
眉間にしわをよせてまた呆れてる。
昨日からこんな表情ばっかり だ。







「‥‥菜々、
圭織さん来たらいい加減離れろよ」

「いいのっ!!
菜々子はこうしてたいの!」

「‥‥‥ガキ」



京介の言葉にむくれていると
辺りをきょろきょろ見回して
歩いていた涼ちゃんの足が止まった。







「あ、いた!圭織ー!!!
‥‥菜々子、ちょっとごめんな」

「え‥‥」



絡めていた涼ちゃんの腕がするりと抜ける。
私じゃない人のところへ向かって
遠ざかっていく涼ちゃんの背中。



簡単に涼ちゃんは私から離れてく。
菜々子には捕まえさせてなんてくれないんだ。