蝉時雨



「涼ちゃんおはよう」

「おー、菜々子」



すぐに涼ちゃんのもとに駆け寄ると、
涼ちゃんはにかっと笑って
気合いばっちりに巻き上げた私の髪を
くしゃくしゃと撫でた。


思わず顔がにやける。

セットした髪が崩れてしまうとか、
もうそんなのどうでもいい。








「和佳おばさん、お久しぶりです」

「ほんとに久しぶりね。
ますます男前になっちゃって!」

「おばさんこそ、
いつみてもおきれいで」

「やあね。お世辞でも嬉しいわ」




お世辞でもと言っておきながら
心底嬉しそうに上機嫌で笑うママと
涼ちゃんのやり取りを聞きながら、
私もまだ、にやにやがおさまらずにいた。

視界の隅に映る京介は、
そんな私を見てあきれ果てている。