蝉時雨




「‥‥絶対負けないんだから」

玄関の全身鏡を睨みながら
自分に言い聞かせるように呟く。





だって付き合ってまだ10ヶ月だよ?

私はもっともっと長い時間を
涼ちゃんと過ごしてきたし、
私の方が絶対涼ちゃんのことわかってる。







「それにしても
ちょっと濃すぎるんじゃない?」

入念に最終チェックをする私に
しばらく視線を這わせていたママが
眉尻をさげる。






「うん。目とか飛んで行きそう」

「京ちゃんおもしろい!!
まつげバサバサしてるものね」


京介の言葉にママは大爆笑。
私の朝2時間の努力も知らないで
この人達は‥‥。






「飛んでいくわけないでしょ!!
もうっ!!ママも笑いすぎだよ!!」


玄関先でそんな会話をしていると、
表に車が止まって涼ちゃんが降りてきた。