蝉時雨



「‥‥くさいかもしれないじゃん」



そうごにょごにょと呟いた私に、
全く理解できない様子で
京介が思いきり顔をしかめる。





「はあ?何だそれ」

「ちょ‥‥っと!!
あんまりおっきい声出さないでよ!
涼ちゃんに聞こえちゃう!!」


慌てて涼ちゃんの方を見たけど、
おばちゃん達と話していて
私達の会話は聞こえてないみたいだ。







「意味わかんねえ。
兄貴がくさいってか?」

「ちっっがうよ!!
涼ちゃんはいい匂いだもん。
私!菜々子がくさいの!!
京介が言ったんじゃん!!!」


「ぶっ‥‥おまっ‥‥
バカじゃねぇの!?」

「わ‥笑わないでよ!!
あんたがくさいくさい言うからっ!!」



肩を震わせて笑う京介をバシバシ叩く 。
ほんと意地悪なやつだ。