蝉時雨







それからみんなで
おじさんのいる和室に移動した。





「はい、これお土産。
これは菜々子んちに!」


そう言って涼ちゃんが
お土産のお菓子を差し出す。




「涼ちゃんありがとう!
菜々子、このお菓子大好き!!」

「だろう?
菜々子は桃大好きだもんな」

「うん!!」




さっきから
顔の筋肉は弛みっぱなしだ。


特別なプレゼントとかじゃないけど
涼ちゃんのくれるものなら
なんだって嬉しい。






「……………アホ面」



もらったお土産を見ながらにやにやしてると
隣で京介が呆れたように呟いた。






「……なによっ」

「別に」





全く…
兄弟なのに全然似てない。


顔はかっこいいのかもしれないけど、
意地悪だし見た目ちゃらそうだし
クールぶってるし!!


京介には
涼ちゃんみたいな爽やかさが
これっぽっちもない 。




心のなかでそう叫びながら、
隣で受信メールを見て
けだるそうにしている京介を
キッと睨み付けた。