蝉時雨



「……つか、お前、くせぇ」

京介はそう言って
無表情で私に視線を向けたまま
鼻をつまんだ。




「えぇ?!嘘だ!!
だって菜々子、今日
お気に入りのミストつけてるもん!!」

「あぁ、それだな。くせぇ」

「はぁあぁ!!??
ちょっと!!
ちゃんとにおいなさいよね!!」



京介にしがみついて、鼻先に
ミストを馴染ませてきた手首を差し出す。






「……やっぱり、くせぇ」

「ええっ?やだ!!ねえ!!
ほんとに?!私くさい?!」

「……………」



慌てる私を尻目に、
京介はやっぱり鼻をつまんだまま。