蝉時雨




ついさっきまで恥ずかしさで
熱くなっていた体が静かに熱を失っていく。
またもやもやとした嫌な感情が
全身を包んでいく。







「兄貴また出かけてんの?」

「‥‥‥‥‥」

「てか人の部屋を
兄貴いない時の溜まり場にすんなよ」

「‥‥‥‥‥」

京介の質問に答えないまま、
本棚からお目当てのマンガを手に取り、
パラパラとページをめくった。






「‥‥涼ちゃんいるよ」

「は?‥‥他に誰か来てんの?」

「んーん。
リビングで圭織さんとDVD観てる」

うっすらと口元に笑みを浮かべて、
何食わぬ顔で開いたページに視線を落とす。








「じゃあお前も一緒に見てくればいいだろ」

「んー、菜々子はいいや。
ここでマンガ読んどく」

「‥‥‥‥‥‥」


何か感じ取ったのか、向けられた視線から
京介の表情が変わったのがわかる。