蝉時雨





「‥‥‥あのなぁ。
それじゃあできねーだろうが」

「~~~っ!!だってぇ!!!」




かぎ慣れたはずの京介愛用の香水の匂いも
耳元で響く聞きなれたはずの声も
いつもとは全部違うように感じて
なんだかくすぐったくて、照れる。


京介なんて意地悪で、憎たらしくて
もう腐れ縁ってだけのただの幼なじみなのに




これじゃあ、なんか


なんか






「‥‥なんか京介、男の子みたい」

「はぁ?意味わかんねーよ。
つか、こっち向け」

「うるさいっ、ばか京介っ」




変に意識してしまう自分が歯痒くて、
こんなにドキドキしてるのが悔しくて、
相変わらず京介の方は向けないまま
悪態をついた。