蝉時雨




「‥‥‥ねぇ」

「ん?」

「京介はさ、キス‥とかしたことある?」

「‥‥はあ?いきなりなんだよ」

「や、ちょっと気になって」

涼ちゃんのキス現場見たから 、
なんて言えるわけない 。






「てかさっきからなんでそーいう話?」

「いいじゃん!!たまには!!」

京介とまともに恋愛話するなんてなかったし
いい機会だと思って、
あまり乗り気ではない京介をよそに
私はそのまま同じ話題を続けた。




「‥‥‥で、どうなの?」

「‥‥別に」

興味深々に質問する私に京介の目が泳ぐ。





「何よー?
隠さなくていいじゃん。
京介絡みの噂いろいろ聞くし」

「‥‥‥‥‥‥」

「教えてくれたっていいじゃん。
ねー、どうなの?!」

「‥‥ある。けどそれがなんだよ」

私から視線を逸らしながら、
不機嫌そうな声で京介が答えた。







「うわー!!なんて奴っ!!
彼女いないくせに!!最低っ!!」

京介の予想外の答えに、
思わず声が大きくなる。




「!?うるせーな!!
あっちから迫ってくんだよ!!
仕方ねーだろ」

「はぁ!?何よそれ!!
京介の女たらし!!!」



ギャーギャーと喚く私を見て
京介は罰が悪そうな表情で頭をかいた。