距離を縮めたい。
このまま一緒にいたってちっとも楽しくもないし。
それに水族館だって楽しめない。
「あ、あの、龍平さん?」
ご飯を食べ終わってすぐに玄関に向かい靴を履いている龍平さんの後姿に
勇気を振り絞って名前を呼んでみる事にした。
「なに?優芽さん」
いつもと変わらない、優しい笑顔。
落ち着く声。
でも
この声でこの笑顔で
他の人を見てて
他の人のモノだったのかと思うと
急にイライラしてきて。
しかもその人が龍平さんの人生を変えた人なんだって思うと。
そこまでにすら達しないあたしは
何だか惨めで
情けなくなる。
「何でも..ない」