彼はいつも通り本読み始める。タイトルを見ても、読書しないあたしには全然わからない。 「…なんでそんなに見てんの」 彼が些か怪訝そうに顔こちらに向けた。 「え や、やることなくて…」 もっぱらバレー一本で生きてきたあたしには、朝を優雅に過ごす技量はなかった。 「あ そうか。気づかなくてごめん。毎朝早く来て、なにしてるの?」 彼は文庫本をパタリと閉じると、なんとあたしと会話する体制に移った。 「あ、朝練!」 「朝練?何部なの?」