一瞬、目を丸くした片桐くんが見えた。
そのあと、ひどく優しく笑ったように見えたけど、目を閉じたあたしには正確なところは分からない。
初めて自分からキスをした。
「ちょっと…!」
若干、赤面した荒川さん。
もう後には引けないな…
「片桐くん…好き。どうしたらあたしのこと好きになってくれるの…?」
荒川さんがいるとか、彼女のフリしてるとか、全部どうでもよくなった。
答えをいつまでも教えてくれない。
かといって、それを聞くのもこわい。
だけど、やっぱり通じ合わなきゃ意味がない。
気持ちを知らないまま中途半端なのは、もうやめるから…
「ミカコ」
名前を呼ばれたけど、涙で滲んで片桐くんの表情はわからない。
荒川さんは何かグチグチ言ってたけど、痺れを切らして家の中に戻っていった。

