「高橋ミカコ、です」 「高橋ミカコ、ね。覚えとく」 そう言って彼はベンチから立ち上がった。 「か、片桐くん!」 「ん?」 かばんを気だるそうに持ち、両手をポッケに突っ込んでいる。その姿すら、あたしには輝いてみえる。 「また、来ても、いい?」 「ご自由に」 まただ。 目を細めて嘲笑とも取れるような笑い方。 妖艶すぎて目眩がする。 あたしは、ベンチに座ったまま彼の後ろ姿を見つめるほかなかった。 時刻は丁度8:00を回ったところだ。