だからといって、声をかけるなんてそんなハードルの高いことを私が出来るわけもなくて。


結局私に出来たのは、ちらちらと横目に彼を見つめることだけ。



そうこうしているうちに、あっという間に私が通う学校の最寄り駅に着いてしまった電車。


どれだけ降りたくないと思っても降りなくてはいけない。



それでも、どうしても彼が気になった。

もう一度、見たかった。



往生際が悪いことは百も承知しながら、電車を降りる直前もう一度彼へと顔を向けた私。


それはほんの一瞬のこと。


だけどその一瞬に私と彼の視線は確かにぶつかった。



あの瞬間、私はすっかり彼に心を奪われてしまったのだ。