そんな、秋口のある日。


その日はたまたま亜実ちゃんがお休みで一人電車に乗っていた私。


そこに凄い勢いで駆け込み乗車してきた男の人がいた。


制服を着ていたから学生だということはすぐにわかって。

でも普通の学生の通学時間より幾分早いこの電車で慌てたように駆け込んでくる人なんて珍しい。


彼は荒い呼吸を整えるように二、三度軽く息を吐くと、ドアに寄り掛かるようにしてその場に立った。


そのまま表情を変えることなく、ぼーっと外の景色を眺めていた彼。



そんな彼の後ろで窓ガラスに映る流れる景色がまるで絵画のように見えて。


彼を入れて一枚の絵になるような。

そんな不思議な感覚。



その姿がとても綺麗だったから。

思わず見惚れた。