七色ライラック





「これ、返しに行くぞ」




そう言って雪が妖しい笑みを浮かべたのが、かれこれ四十分くらい前のこと。

そして漸く冒頭に戻るわけで。


とりあえず校門の近くにいた話を聞いてくれそうな女子生徒に"和泉さん"を探していると伝えれば、その子は頷いて校舎の中に入っていった。

どうやら呼んできてくれるらしい。




(あー…緊張した)




彼女の名字を告げるだけで緊張するなんて。

我ながら乙女かと思う。

まぁ、どうしようもないのだけれど。


それにしても、サク女の門の前に立っている俺と雪はかなり浮いている気がして仕方ない。

というか確実に浮いている。


校門の横に堂々と書いてある桜庭女学園の文字が俺たちを威嚇しているような気分だ。