「!」




だからまさか。

そんなこと、あるわけない。


彼の真っすぐ目が私を見ているなんて。

その目が優しく柔らかく細められている、なんて。



ドキン、ドキン



扉が閉まり電車が通り過ぎた後も、私はその場を動くことが出来なかった。

亜実ちゃんの遅刻するよ、なんて言葉も聞こえない。

無遅刻無欠席とか遅れたら先生に怒られちゃうとかそんなこと考えられなくて。


あぁ、どうしよう。




(顔が、熱い)




狂ったような早さで鐘を鳴らす心臓に比例して、どんどんと熱を増していく顔。



すき、スキ




「…好き、です…」




誰に伝えるでもなく呟いたそれは、密かに私の想いを確かなものにした。



春の風が心地好い五月晴れの月曜日のこと。