彼は旅する猫だった。
 死ぬる場所を探して旅をする。
 着いた場所は、荒野を見下ろす断崖。
 平らな頂きであぐらをかいて、彼は目を細めた。
 果てに星の縁が霞んで見える。
 風が、唸っていた。
 空が、突き抜けていた。
 ここでいいと思った。
 地平線に紅の日が沈む。
 こうべを垂らす彼の影がますます濃くなり、夜へと溶けた。
 最後に浮かべたのは薄い微笑み。
 夜空には白い三日月が浮かんでいた。