若をひとりにすることは危ないとわかっているのに、その背中を追うことができない。

何よりも若を優先すると断言していたのにひかるちゃんから離れられない。

心痛な面持ちで両親のところへと行こうとするその背中についていけない。



パタン




目の前で扉が閉まっても追いかけることはできなかった。



「榊さん、若の気持ちをわかってますよね」

「………」

「いつも冷静な榊さんがあんなに取り乱したのは初めてみました」



しばらく待合室で目を閉じていたら前広が言った。



「まだでしょうかね?」



そしてまた重い沈黙が流れて時が経つ。



どのくらい経っただろう。

成田の呼ぶ声が聞こえた。


「榊、ちょっと来い!」



声と同時に奥へ走り出していた。



「ひかるちゃん!」