タバコを取り出した若に火を差し出す。



自分と出会った時にはまだ同じ高校生だったはずだが、大の大人を従えて夜の街の営業のあがりを回収しに歩いていた。

年上の女を抱き、

毎日違う女が群がり、生意気なガキだった若もいろいろと思うところがあったにちがいない。



「俺にできないことはねえな。今は感謝してるくらいだ」

「…若は強いですね」

「そういう榊だって強いじゃねぇか。俺の何倍もの仕事を短時間でこなす」

「そこですか?」


タバコの煙を吐き出しながら笑った声がする。


「榊、今日は屋敷に帰ったら久しぶりに飲むか」

「喜んで。言っときますがわたしは強いですよ」

「俺だって弱くはねえぞ」




信号を曲がりもう少しで大神物産の本社に着く。



「榊、お前は駐車場で待機してろ」



若なりの優しさで自分に少し体を休めろということだ。