時間はもうない。
迷ってる時間はなかった。
「さあ、入ってください」
背中を押して離れの木戸の中に半ば強引に押し込めた。
出口を塞げば気持ちも決まる。
「待ってるんです。いつか元気な姿を見せにきてくれると」
死ぬ覚悟で消えようとした若佐を追いかけて生きることを願ったけれど、あれから若佐の消息は途絶えたままだった。
口には出さないけれど、ひかるが心配してるのを知っていた。
「頼みます。若佐」
「榊、時間だ」
呼びにきた若が式の始まりを告げた。
「若佐、会ってやれ」
若も途中から聞いていたらしく、それがひかるが一番喜ぶことだと諭した。
―――会ってやれ。



