榊原が親父に目配せされて無造作に懐から取り出したもの。
「代紋」
「函館でなんか困ったことあったら使ったら使え」
「これは、」
「こういうのは使うことがねえことを祈るがな」
ふ。
親父が笑うと、榊原も口角を上げた。
「榊さん、それ」
ひかるが腕の中からそっと見上げ不思議そうにしているのを見て。
大事なものなんですよ。と、告げる。
「榊、何か厄介ごとに巻き込まれたりした時に使えばいい」
「厄介ごと?」
「それを持ってたらここいらじゃ怖いもんなしだからな」
榊原が意味深に笑う。
代紋は金バッチだ。
誰彼と持てる代物じゃない。
「親父がおまえを気に入ったんだ。黙って受けとれ」
「しかし…これは受けとるわけにはいきません」
大事なものだ。
そんな簡単には受け取れない。
「いいから受け取っておけ」



