「親からもらった体に簡単に傷をつけたらいかんな」
平然と顔を上げる。
小刻みに震えるひかるの腕に伝ってくる赤い血を見ても動じない。
刃を握ったままのヒグマの親父がもう片方の指で自分の指を一本ずつ開いていく。
ひかるの甲に手を重ねて咄嗟に動いてくれていなかったら、躊躇いもなく削ごうとしたひかるの指は今ごろは……
思い出して背筋が凍った。
もしも―――
「切れすぎるのもなんだな。痛さもわからん」
ひかるの手から得物を除き、甲の深紅の血を無造作に拭う。
自分の指を開いて閉じて腱がしっかりしているのを確かめた。
「まだ儂も鈍っておらんかったな」
ふっ。
口元を歪めて笑った。
壮年の男がすぐにタオルを持って来て親父の手のひらをぐるぐると巻く。
「お嬢さんが無事で良かったな」
「……ありがとうございます」
「ご、ごめんなさい。あの、傷を手当てしなきゃ」



