『若恋』榊の恋【完】




腕の中にいたはずのひかるがすり抜けていく。
刃がひかるの指に近づいていく。


すべてがスローモーション。



―――指が!

ひかるの指が―――




間に合わない。
覚悟を決めて行動するひかるに追い付けない。



「よせ!!」


ギラリと光る抜き身が宙を切り削いでいく。



間に合わない!!





「やめな。お嬢さん、あんたの指もらってもな」

「親父!あ、」



親父がひかるの手首ごと刃を掴んで捻りあげた。


「―――血が」


上げたひかるの腕に真っ赤な筋がツーッと流れた。


ポタッ


ひかるが目を見開いて上げられた腕を見上げる。


「うそ、」


鋭い光を放つ小刀を握ってるのは―――





「度胸がいいのは認めるが、お嬢さんの指が欲しいわけじゃないんでの」

「親父!」

「騒ぐな」

「、」

「これしきのことで騒ぐな」




周りを低い声で制して、ひかるの耳元で痛みを感じさせない柔らかさで告げた。