心を揺るがすのはただひとり。
ひかる、―――貴女だけだから。
「親父、榊の代わりに、俺が」
苦しげに眉を寄せて胸を押さえていた榊原が半歩前に出るのを目で阻止する。
「ありがとうございます。その気持ちだけ受け取っておきます」
「やだよ、榊さん!やだ!」
「ひかる。いいんですよ。大丈夫ですから…」
しがみついて目を真っ赤にさせたひかるから顔を背ける。
これ以上見ていたら一緒に泣きたくなる。
乗り込んできて無事には済まないのは重々承知だった。指を落とすのもやむを得ないと思っている。
ただ…ひかるに泣かれるのが辛かった。
「やだよ、わたしのせいで榊さんの指が、」
「違いますよ。ひかるのせいではありませんから。だから」
泣いてはダメです。
艶やかな髪をそっとくしけずる。
指通りの良い髪がさらさらと肩に落ちた。



