『若恋』榊の恋【完】




みんなの眼差しの中心に微動だにしない親父がいる。


「………」



そして、目を開ける。



「ここは穏便に指一本で済ましたろか」

「!!」



指一本…それで騒がした詫びをしろと言うことだ。

それで騒ぎはなかったことにしてやると。



ひかるを無傷で連れ出せるなら。丸く収めて戻れるなら。若に迷惑が掛からないならそれでもよかった。



「―――小刀を」



「いやっ!榊さん!」

「親父!!」

「止めさせて!」



―――指一本。

頭が冷えて行く中、腕の中で叫ぶひかるの頭をそっと撫でた。


「ひかる、そんな顔をしないでください。指一本で片が着くなら安いものでしょう」



泣かれるのは辛い。
ひかるに泣かれると胸が張り裂けそうだ。


「小刀を用意していただけますか?」

「やだ!お願い、やめて!」



ひかるの悲痛な声を聞くのも辛くなる。
耳を塞いでしまいたい。
出来るならば、この場からひかるを遠ざけてほしいとさえ思う。