親子ふたりが睨み合いをして一触即発だ。
辺りの空気が冷たく重くなる。
「待ってください」
飛び出したのは今まで後ろで顔を青くして震えていた恋人役をかって出た彼女だ。
顔を上げて真っ直ぐに立ち丁寧に頭を下げた。
「はじめまして。わたし吹田と言います」
「恵…」
なんだ?この女は?
ヒグマの親父からそんな視線を受けても彼女は引かなかった。
傍にいたヒグマの息子の袖をギュッと掴むと大きく息を吸い込んだ。
「わたしが元太の女です!」
胸を張り堂々と告げる。
足を震わせながらも地にしっかり立ち裏返りそうになる声を絞った。
気丈に立つ彼女に面食らったのは親父の方だった。
「あんたがか?」
「恵?」
ヒグマふたりが同時に呟いた。
「わたし…元太が好きなんです!」
「恵?」
「ほう、いい度胸しとるな。儂らが怖くないのか?」



