どん!
廊下を駆けて真っ直ぐに懐の中に飛び込んで来て、爽やかな夏の香りを纏い腕の中に収まった。
「ひかる?」
「ごめんなさい」
泣きながらすがり付き小刻みに震える肩をギュッと抱き締めた。
この腕の中に戻った唯一のもの。
絶対になくしてはいけないものを二度と離さない。
「ひかるが無事ならそれでいいんですよ」
声が震える。涙腺が緩み目に熱いものが滲んでくる。
心臓がうるさく音を立ててもう壊れそうだ。
ひかるが腕の中に戻っただけで後は何もいらない。
欲しいものはこの世でたったひとつ。
―――ひかる
あなたがいるだけで。
そばにいて笑ってくれるだけでいい。
艶やかな長い髪をすく。
柔らかな頬を撫でる。
この腕の中に抱く唯一のもの。
「ひかるが無事ならそれでいいんですよ」
「……榊さん」
甘えるように顔を上げて見つめてくる瞳にそっとくちびるを落とした。



