『若恋』榊の恋【完】



頭が混乱したのか壮年の男が聞き返す。

「奥にいて親父と話をしてるのが、」

「わたしの恋人です。理由があってこの屋敷に来てます」

「後ろの女は、」

「本物の彼女です」



壮年の男が値踏みするような視線を後ろにいる彼女に送る。
しばし考えて壮年の男が言った。


「待ってろ」

踵を返して奥へと歩いて行く。



「悪かったな、少し悪ふざけが過ぎた」

ボソッと榊原が隣で呟いた。

「わたしも手加減しなかったのでおあいこです」


ふっ。
胸を押さえ息を苦しげに吐き出してる榊原が薄く笑い、ふたりの間に不思議な風が流れた。




「榊さん!」


遠くからひかるの声がした。




―――ひかる?