「親父どのと戦争したいのか?」
「違います。わたしは大切な彼女を誰にも触れさせたくないだけです」
「なら、急いだ方がいい」
卑下た笑いを覗かせた。
「そう簡単には通すわけにはいかないがな」
「それでも通ります」
揺るがない。
たぶん、榊原は一目置かれるだけあって頭が切れてなおかつ腕も立つんだろう。
負けるわけにはいかない。
この先でひかるが心細い思いで待っているに違いない。
早く行って抱き締めてやらなければ。
泣くのを我慢して目を赤くしているだろう。
早く行ってこの鳥籠の中から連れ出してやらなければ。
「来な」
榊原が上着を脱ぎ捨てて無様に転がってるふたりに下がれと命じた。
肩を押さえた男と、首を押さえた男が奥の間にズリズリと後ずさる。
「吹田さん、離れて」
「榊さん?」
彼女の目を見て頷き、一歩も引かないと告げた。



