『若恋』榊の恋【完】





「大切に思えば思うほどひかるを失うのが怖いんです」

「え?」

「わたしを庇って傷を負った。その事実だけで胸が潰れそうです。自分が斬られた方がどんなにかましだったか」

「わたしは榊さんが無事ならそれで…」

「自分の命よりもひかるが大事なんです」



ぎゅっと力を入れるとひかるの優しい香りが纏う。

腕には血がついたハンカチが見えた。


「ひかるがもしも命を落とすようなことがあったら…」


「落とすようなことがあったら?」


「わたしもその時は」




そこまで言った後。
言葉を続けることができなくなった。

ひかるとどこまでだって一緒だと言いたいのに、言えばひかるは首を横に振ってダメだと言うだろう。



「その時は……」



何も言わなくても自分の気持ちは決まってる。

ひかるをひとりにはしない。