「あらあら、オノロケごちそうさま」
「女将に言われたくないですよ。ご主人といつもべったりくっついているのは誰ですか」
「あら。そう言えばそうね」
女将が笑った。
ひかるちゃんも女将が親しげに笑ったことで緊張がほぐれたようでクスクス頬笑んでいる。
「離れをすぐに用意させるわ。上がって」
「ありがとうございます」
女将がひかるちゃんを手招いて呼び、ランプの灯りでぼんやりと浮き上がる宿に上がらせた。
「…ステキ」
「趣があるでしょう?時間に急かされてないようで好きなんです」
宿はランプだけの灯りでほんのりと照らされて幻想的なところがある。
距離を置かずにランプが廊下にいくつも掛けてある。
「いつ来てもいい所ですね」
「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいわ」
「すごいステキです」
「そう?ふふふ」



