甘い吐息。
ひかるちゃんのすべてがいとおしい。
ふたりで寄り添ってお化け屋敷を出た時にはもう気持ちは固まっていた。
「このままついてきてくれますか」
ひかるちゃんは恥ずかしそうに小さく頷き返す。
足早にお化け屋敷を出て会場を抜けるとタクシーを拾った。
「うぐいすの宿まで」
運転手に場所を告げると車は滑るように走り出した。
うぐいすの宿。
気に入って年に数回は訪れる山間にある静かな宿だ。
そこの女将とは幼馴染みでいつ行っても快く離れを用意してくれる。
「うぐいすの宿は静かでいいところですよ」
「うん、どんなところか楽しみ」
ふたり寄り添って手を握ったまま目を瞑る。
隣にいるひかるちゃんの心臓の音が直接響く。
自分より少し早めの鼓動。
ドキンドキン



