「ひかるちゃん、あの若佐という担任は独身ですか?」

質問の意図を汲みきれてないひかるちゃんは小首を傾げた。

「若佐先生は独身だよ。女生徒みんなが憧れてるの。なんでも実家が資産家なんだって」

「独身…資産家」

「それだけじゃなくて、生徒思いだし優しいし」

「優しいし?」


ひかるちゃんも担任の若佐が気にいってるようで、たった今五十番以内に入らないと特別な補習を受けなきゃいけないと言われたことを忘れている。



「ひかるちゃんは担任が気にいってるんですね?」


なぜか怒りに近いものが沸沸と沸き上がってくる。


「榊さん?」

「あの担任はいい人そうなのでね」

嫌味を言ったつもりだったがひかるちゃんにはわからなかったらしい。
にっこりスマイルで、

「みんなが憧れてるのわかるなあ。わたしもいいなーって思ってるの。
あ!でも、わたしの好きなひとは榊さんだけだからね」