ミカエルの表情は鳥の目を通して悪魔庁のルシフェルにも見えているはずだ。

 だが、ミカエルの嫌味など慣れたものとでもいうように、鳥はただ、ふふんと鼻を鳴らすような声を漏らした。

「俺はな。愛ゆえに過ちを犯す者を心底悪いとは思えないのだよ……むしろそういうものにはいとおしさすら感じるよ」

「貴方がそういう方だということは、今更。重々承知していますがね。でも……そんなことだからいらない厄介ごとを増やすのですよ。何故わざわざマリアに息子の寿命を教えたのです。脱走することは分っていたでしょう?」

「なんだ。お見通しだったのか」

「あなたの考えくらいすぐに見抜けますよ。マリアが彼を助けにいくとわかっていて知らせたんでしょう」

「いやあ、実に予想通りのことをやってくれたよマリアは……面白い奴だ」

 責めるようなミカエルの台詞に、鳥はルシフェルの声であくまで楽しげに答える。

 心から楽しんでいる様が見て取れて、ミカエルは頭痛を覚え、こめかみを押さえた。