その視線と声色のあまりの冷たさに、さすがのマリアさんもすぐにガッツポーズを解く。
「……本当に。ルシフェルは、甘すぎるんです……全く、いつもいつも色々面倒をおこすようなことを……」
大人しくなったマリアさんを確認したミカエル様は、疲れたような表情で長い溜息を吐いた。
どうやら天界も地上と同じで色々とあるらしい。
人間社会とよく似て、対人関係(この場合は悪魔や天使なので人というのも変だけれど)での悩みも多いようだ。
ミカエル様はルシフェル様に何かと振り回されて苦労しているのかな……と妙な想像が頭の中で膨らんだ。
「とにかく、そんなわけでこうなってしまったわけで、君の寿命はリセットされましたから新たに定められるまでは当分死ぬことはないでしょう」
「あ……、はい」
「良かったね~。智彦」
一旦はミカエル様に睨まれてしゅんとなっていたマリアさんだったけど、ミカエル様の言葉を聞くと、そんなことはもう忘れたとばかりに心底嬉しそうに笑顔を浮かべた。
正直、まだ戸惑いから脱け出せないでいる僕自身よりも、マリアさんのほうがずっと喜んでいるように見える。

