マリアさんに聞いた簡単な説明を埋めてくれる答え。
「ルシフェルはマリアから奪った羽根を君に埋めました。それは君が死ぬまでマリアに大きな魔力を返さないため」
「何故ですか?」
「君や君の父上が生きている限り、マリアは君達から離れることはないだろうし、寿命的にもいなくなるのは君のほうが後だと決まっていた。魔力をもった存在が地上で生活していくことは色々な秩序を乱したりすることになりかねないから、マリアが地上に未練を残したままのうちは羽根を返すわけにはいかなかったのです。」
そこで一旦ミカエル様は言葉を切ると、額にかかる金の巻き髪を鬱陶しげに掻き揚げて、何故かほんの少し苦い表情を浮かべて続けた。
「……ルシフェルは情に厚いから、本当はマリアをすぐに天界に戻したかったようですけど……そうもいきません。掟は重く、それを破ったマリアが重罪を犯したことにはかわりない。その罪を軽くすること自体もまた罪になる」
「それで……僕に……」
何故、マリアさんの羽根が僕の体の中にあったのか、詳しい事情を聞けば、それは充分に納得できるものに思えた。
結界に閉じ込められていた間も何度か脱走したとマリアさんは言っていた。
僕や父さんが生きている間に罪が許され羽根を返してもらっても、きっとマリアさんは天界には戻らなかっただろう。

