僕を救おうと、悪魔だったマリアさんが最後に使った時間停止魔法の効力が切れるまで時間があったので、ミカエル様に話を聞くことが出来た。
「清い魂を扱うのが天使庁。罪を犯した魂を扱うのが悪魔庁。天使庁は私が、悪魔庁はルシフェルという私の兄弟が運営を任されています」
想像もつかない世界の話を聞けるなんて機会はそうあるものではないだろう。
じっと話に聞き入る僕の後ろでは、失礼なことにマリアさんが欠伸混じりに伸びをしているが、ミカエル様は僕に話をすることに専念してくれた。
「マリアは元々ルシフェルの補佐を勤めるほどの上級悪魔だったんですよ。それが、あろうことか人間と……君の父上と恋に落ちた上に、魂を預かる者として最も重い罪、延命を犯してしまった。その為、魔力の羽根を奪われて地上の結界に閉じ込められていました」
「魔力の羽根……あの、黒い羽根ですね」
僕が確認するように尋ねると、ミカエル様は静かに頷く。
「ええ、そうです。あれは悪魔と天使ごとに特性が違って、各々の役目に準じて白い羽根には善意を感じ、呼び寄せる力。黒い羽根には悪意を感じ、呼び寄せる力があります。そして、魂を回収する際に不備がないようあらゆる状況に対応できるだけの術を使うための魔力を生み出す源でもある。生み出された魔力は翼に蓄えられますが使えば減っていくものです。つまり、あれを奪われた天使や悪魔は新しく魔力を生み出すことが出来ない為、次第に本来の能力を失ってしまう」

