「勝手に寿命の人間の命を繋いで駆け落ちするは、謹慎中なのに結界から抜け出して息子の覗きにばかり行くは……挙句の果てにはせっかく天に戻れるチャンスを教えてやったのに、それをふいにしてくれるは……もう私の手には負えない」
綺麗な眉根を少し寄せて、
「と、ルシフェルが嘆いていましたよ?」
天使はそう言って苦笑した。
「そんなこと言ったってねえ~。好きになっちゃったもんは仕方ないし、息子は可愛いから見たいに決まってるでしょう~?」
身体はかわらず少しずつ消えようとしているのに、マリアさんは全く変わらない調子でしゃべっている。
『覗きに……?』
聞いた言葉がひっかかって思わずマリアさんの顔を見る。
そんな僕に、マリアさんはちょっと照れくさそうに笑ってみせた。
「いや、ちょこちょこと……盗み見に来てたのよ。すぐ監視に見つかって連れ戻されるし、近寄れなかったけどねえ……見るくらい減るもんじゃないっしょ?」
「……マリアさ……」
「かわいかったわよ~子供のころも。すっかりいい男になっちゃって母さん嬉しいわ~」
返す言葉もない。

